春が近づいてきました。ブドウも眠りから覚めますが、病原菌や害虫も眠りから覚めてきますので、農薬散布での病害虫防除も間も無く始まります。
講習を受けたり、文献を読んだりして、大きな誤解をしていることに気づきました。病害防除のために農家が散布する農薬は、殺菌剤と呼ばれますが、大半は予防剤なのです。
参考文献:だれでもできる果樹の病害虫防除 ラクして減農薬 [ 田代暢哉 ]
殺菌剤は発病の前に使う
「殺菌剤」はその言葉のイメージから、「菌を殺してしまう」という何か恐ろしい感じがします。しかし実際には菌そのものを殺す力はありません。多くは病原菌の胞子の発芽を抑制し、そのことで感染と発病を抑えているだけなのです。
殺菌剤は予防剤
殺菌剤は大部分が予防剤です。予防剤は保護剤とも言います。つまり前もって散布した場合に限って樹体を保護し、病原菌の感染から守ります。しかし、病斑に棲みついている病原菌を殺す力はない、すなわち、発病を認めてからの散布では遅いのです。病害は、発症してから治療するのではなく、発病する前に予防する、これにつきます。
定期的な散布が必要な理由
よくブドウの防除暦では、生育期は10日に一回のペースでの定期的な散布が推奨されています。一回散布したらそれでOKではない理由、それも殺菌剤は実は予防剤であることに関連しています。
生育期のブドウは、おおむね3日に一枚のペースで展葉していきます。つまり、約10日経つと新しい葉が3枚展葉することになります。ですが、当然ながらこれらのフレッシュな葉は予防剤でコーティングされていないので病原菌のターゲットになってしまうのです。常に樹体全体を予防剤でコーティングし続けるために、10日おきの薬剤散布が必要になります。
かといって、10日ペースできっちりと散布できない時もあります。例えば雨続きで散布に行けない(散布したとしても流れてしまって意味がない)や、作業者が風邪でダウンして作業できない、などなど。
このようなことも想定して、薬剤だけに頼らない防除、例えば圃場を常に衛生的に保つとか草刈りをして風通しをよくなど、の基本防除をコツコツ積み上げておくことも大事です。
病害虫防除 -病害虫源を制御する- Control of Pest Sources
いずれにしても、春の訪れとともに、本格的な農薬散布作業が始まります。
SSも定期整備を終えて帰ってきてます。今年も一年しっかり活躍してもらいましょう!