養分転換を迎え、ブドウたちは秋の収穫に向けてどんどん光合成を行っていきます。光合成の葉で行われますが、葉は多すぎぎても少なすぎてもダメで、ちょうどいい葉っぱ量にしてあげるのが農家の仕事の一つです。
参考文献:図解でよくわかる農業のきほん
物質生産とブドウへの分配 Material production and distribution to grapes
作物葉群の光合成量と葉面積指数
作物の収穫量を多くするためには、繁茂した葉群(群落)全体の光合成量を高くする必要がある。葉群の繁茂度を「葉面積指数」という。葉面積指数とは、作物個体群が土地面積の何倍の面積の葉を展開しているのかを示す数値である。葉面積の合計が土地面積の4倍であれば、葉面積指数は4となる。
個体群の総光合成は、葉面積指数が小さい初期の生育では、葉面積に比例して高まる。葉面積がさらに増えると、葉の重なりが増すため、それ以上葉面積指数を増やしても総光合成は増加しなくなる。
一方、葉面積指数が増えると、葉の呼吸量は増加するので、作物個体群の正味光合成は、ある葉面積のときに最大値を示すことになる。この正味光合成が最大となる葉面積指数を「最適葉面積指数」という。この最適薬面積指数は、太陽光の強さや業の角度に強く影響される。
最適葉面積指数近くに達した作物群蕗の光合成は、一部の陰性植物を除き、個葉で見られたような光飽和を示さなくなり、光エネルギーに比例的に増加するようになる。そのときの比例係数が太陽エネルギーの利用効率であり、品種、窒素栄養、水分、栽植様式などの影響を受ける。太陽エネルギーの利用効率を高めることが多収栽培の要点である。
受光態勢で変わる光合成量
作物葉群の総光合成は、葉面積指数と光量が同じでも、各々の葉の受光態勢によって異なる。
葉が水平に着生する、「水平葉型個体群」では、太陽光の大部分が上位の葉によって受光されるため、下位の葉には直射光がほとんど届かない。それに比べて、「傾斜葉型個体群」では、下位の葉にもある程度直射光が届く。すると上位葉と下位葉を合計した光合成量は傾斜葉型個体群のほうが水平葉型よりも高まる。それゆえ、太陽エネルギーの利用効率も傾斜葉型が水平葉型を上回る。
葉の好適窒素濃度と受光態勢の向上
また、個々の葉の光合成能力も個体群の光合成に大きな影響を与える。とくに、葉の窒素濃度は光合成能力に強い影響を与えるが、窒素肥料をやりすぎると、葉面積も大きくするので過繁茂となり、受光態勢を悪化させることになる。
受光態勢をよくすることは、農業生産全体の基本である。イネの「疎植栽培」は、植え込む苗の問隔を広くとり、光がよく当たる開張型の姿で、葉の窒素濃度も高めに維持し、太茎・大穂で安定収量を実現する農法である。