果樹農家の仕事は、果実を収穫してそれを売って収益を得ること。
その果実を得るには、果実がなる植物本体が元気じゃなきゃいけない、でも、本体が元気すぎると果実は大きくならない。。。うーん、悩ましい。
参考文献:図解でよくわかる農業のきほん
個体維持と種族維持
全ての植物は育つ環境の影響を受けながら、「栄養成長」と「生殖成長」をくりかえして、次世代に命を繋いでいます。
個体維持のための栄養成長は、種子の発芽から始まり、茎や葉や根を増大させて自分の体を作る営みです。
その後、子孫を残す種族維持のための生殖成長が、「花芽分化」から始まり、開花、受精を経て、果実を肥大成熟させて、再び種子を形成します。
農業とは、作物が次の世代に生命を繋ぐ営みをサポートする仕事で、果樹農家はとりわけ、この営みの中で、果樹という生殖成長の過程の一部産物を得ることを生業としています。
過剰な栄養成長はNG
植物の営みを農業として上手に利用するために注意しなければいけないことがあります。
植物は個体維持に好適な環境では栄養成長に傾いて、種族維持の成長に進みにくくなります。特に、過剰な栄養(過剰な施肥)や過保護な管理は種族維持能力を劣化させることになります。
分かりやすいケースが、「つるぼけ」
スイカやサツマイモでは、窒素養分が多すぎるとツルばかりが茂って、繁殖器官たる花や果実や塊根(イモ)の生育が悪くなってしまいます。
物質生産とブドウへの分配 Material production and distribution to grapes
遺伝性と変異性
種族として命を繋ぐもう一組の基本的性質は、遺伝性と変異性です。
遺伝性とは、親の遺伝的性質を子に正しく伝える性質。
変異性とは、親の遺伝的性質を変化させ、子に伝えるための性質。
多くの植物では、好適な生育環境では遺伝性が強くなり、不敵な環境では、変異性が強くなります。
一見すると矛盾するこれらの性質は、植物が環境の変化に対応するため、遺伝的多様性を確保していずれかの個体を生き残らせようとする戦略的性質です。
ダーウィンさんの顔が思い浮かびますね。この性質は、どちらかというと、品種改良を行う上でうまく使わなければいけない性質で、品種改良後の栽培フェーズでは、あまり積極的に起こってほしくないものになります。
図解でよくわかる農業のきほん より引用
樹には元気でいてもらわなきゃいけない、かといって適度なストレスがないといい成果は出ない。
なんだか人間社会と同じような気がします。