薬剤防除で大切なのは、「薬剤の選択」「散布タイミング」「散布法」の三つの要因が満たされている必要があります。このうちの一つが欠けてもその防除は成功しません。
参考文献:だれでもできる果樹の病害虫防除 ラクして減農薬 [ 田代暢哉 ]
薬剤を選ぶだけではダメ
「農薬は散布すれば効くし、特に新薬の効果は高い」
と信頼している農家が多いそうです。実際自分もそうです。
それだけ、農薬に信頼を寄せているということですが、逆に農薬の効きが少しでも悪いと、原因をすぐその農薬のせいにしてしまう理由にもなります。農薬そのものより、本当は散布時期が遅かったり、散布量が少なかったり、が原因のことが多いそうです。
防除歴のタイミングでいいか
タイミングの設定についてはどうでしょうか?
一般には、JAなどで作られた防除歴に従う散布が行われています。自分も基本的には、JA技術員の方々が作ってくださった防除歴に従っています。しかし、防除歴は平年並の気象条件と病害虫の発生状況に基づいて作られた基準にすぎません。防除歴を盲信した散布では、いざという時の危機管理には対応できません。防除歴も参考にしながら、自分で病害虫の発生を把握し、適切なタイミングを自分で決めていけるようにならなければいけません。
そのためには、「今何をまけばいいか」「何の病気をターゲットにしているのか」を、納得して実際の散布を行うことが大切です。いかに府落ちして行動できるかです。農薬の知識を身につけるだけではなく、自園の観察、生育や気象条件の把握など、積極的な意欲を持って取り組むことが必要です。
今のピンチを切り抜ければいいという考えはやめて、防除を科学的に詰めてゆく姿勢を忘れないようにする必要があります。
実際、散布が間違っていて、ブドウがダメになって収入が減ったとしても、それは防除歴が間違っていたのではなく、自園むけにカスタマイズできなかった自分の責任です。
取り入れられる知識はできる限り取り入れて、ある程度のトライアンドエラーも繰り返して、自分の防除レシピを確立したいものです。
ブドウ農家と黒とう病の戦い Fight against Plant Disease