雨と病害虫の関係は非常に強い。
効果的で効率的な防除を行うためには、雨と病害虫との関係をしっかり抑えておくことが大切です。
参考文献:だれでもできる果樹の病害虫防除 ラクして減農薬 [ 田代暢哉 ]
雨は病気の目覚まし時計
病気の原因となる病原菌の大部分がカビ(糸状菌)と細菌です。これらの病原菌は幹や枝、葉の病班部、あるいは土の中に棲息しており、普段はじっとしています。ところが、雨が降って水分が与えられると活動を始めます。糸状菌は子孫を増やすためにせっせと胞子を作り、細菌は病班部でその量を爆発的に増加させます。
降雨が目覚まし時計がわりになって病原菌の活動が始まり、新たに大量に作られた胞子や細菌がイキのいい伝染源になります。
雨は病原菌の運搬薬
大量に作られた胞子や増殖した細菌が移動するのに頼るのも雨です。病原菌の移動手段として雨は重要な役割を果たしています。雨水の中に胞子や細菌が入り込んで、枝や幹、葉を伝って移動してゆきます。
この時、風があるとダブルパンチ、より広い範囲に広がります。このように雨で伝搬する病気を雨媒伝染病と呼び、果樹被害の大部分を占めています。
雨の時は薬剤散布もできない
雨媒伝染病に立ち向かうために用いるのが、薬剤散布です。しかし、雨の時はこの薬剤産王ができないという逆説もあります。雨の時はせっかく薬剤を撒いてもすぐに流されてしまって効果がないのです。基本的に薬剤は殺菌剤ではなく、予防剤なので、樹体に付着して留まってくれないと意味がないのです。
長雨が続くと、早く薬剤散布しないとしないと取り返しのつかない被害が出そうだけど、雨で散布できない、というジレンマに農家は襲われます。こうならないように、早め早めの農薬散布と、地道な圃場衛生や耕種的防除を進めておくことが大切です。
農家にとって雨は恵み、ですが病気を運ぶメディアでもあります。雨のことをよく知って、うまく付き合ってゆくことが大切です。
防除は科学だ Pest Control Is a Science.