春はさまざまな植物が芽吹いて動き出しています。植物ごとに違いはあれど、生育の良し悪しの判断は共通で考えられることが多いです。
参考文献:図解でよくわかる 農業のきほん
健全な生育の条件とすがた
作物栽培では、生育の途中で、作物体の大きさ、形、色などを常に観察し、生育の良し悪しを見分ける目を養うことが大切になる。作物が健全に生育するためには、①光合成、②養分吸収、③タンパク質合成などの代謝活動、この3つがバランスよく営まれ、各器官が調和を保ちつつ成長することが必要である。とくに、光合成で生産される炭水化物の量と、タンパク質の主原料である窒素の吸収量のバランスが重要になる。この2つのバランスがよいと、葉は広く厚くなり、根系は大きく発達し、健全型の生育になる。栄養成長期に健全型の生育をした作物は、その後の成長がよく、病気や干ばつ、低温などの環境にも強くなる。
不健全な生育のすがたと原因
このバランスに乱れが生じると、作物の生育は不健全になり、その結果は作物体の大きさ、形や色の異常となって現れーる。不健全な生育は、徒長型・栄養不足型・障害型の3つに分けられる。
【徒長型】
作物の徒長は、養分とくに窒素の過剰で起こるが、高土壌水分、高温などで助長される。葉は薄く大きく、先端.部が垂れ下がり、節間は細く長くなり、根系の発達は抑えら.れる。多窒素では分枝数も増えて、生育中・後期には過繁茂となる。徒長型の作物は、害虫や病気、干ばつ、低温に弱く、収量低下につながる。
【栄養不足型】
栄養不足では、作物全体が小さく育つ。窒素が不足すると葉色は淡くなるが、リン酸が不足すると逆に暗緑色になる。また、分枝や花芽の数も大きく減少し、収量低下を招く。
【障害型】
障害型の生育不良は、器官の損偽で発生し、作物栽培では、とくに根腐れが問題になる。根の損傷によって養水分の吸収が抑制され、晴天時のしおれや栄養不足で成長が著しく妨げられる。
育苗期の生育診断
育苗期の生育も、苗をとりまく環境(温度・光・水・養分など)に左右されるので、苗の形状・色などを観察し、適宜管理方法を修正する。葉色の濃淡。子葉と葉柄の長さの違いと、開く角度の違い。それぞれに温度の高低、光の強弱、水の多少が反映しており、光合成活性の度合いを示している。育苗から収穫まで、農業は観察が基本である。