肥沃な土地、とか、豊かな土地、と言う言葉があります。
植物がよく育つ土地、と言う意味だと思いますが、言い換えると、養分を蓄える力が強いということ。
養分を蓄える力は、化学の考え方で捉えると良いようです。
参考文献:環境・資源・健康を考えた土と施肥の新知識
土壌の保肥力
土壌には養分を蓄える性質があり、それを一般的には「肥もち」、土壌学では「保肥力」と言います。
土壌の中で養分を直接蓄える成分は、粘土鉱物と腐植で、これらの成分がコロイド粒子(土壌コロイド)を形成しています。そしてこれらの土壌コロイドは通常、マイナスの電気(陰電荷)を帯びています。この電気特性が重要なのです。
CEC(Cation Excange Capacity)とAEC(Anion Exchange Capacity)
肥料として土壌に施用される養分のうち、窒素(アンモニア)、カリウム、カルシウム、マグネシウムはいずれも水に溶けて陽イオンになって存在しています。これら、プラス電荷を帯びた養分が、マイナス電荷を持った土壌コロイドに吸着されます。吸着された養分たちは、雨水や灌水に流されにくくなって、土壌中に留まってくれます。
一般的に、土壌の陰極電荷が大きいほど土壌の保肥力が大きく、その大きさは、陽イオン交換容量 CEC(Cation Excange Capacity)という値で示されます。言い換えれば、どれだけの陽イオンを抱え込むことができるか指数です。
CECだけではなく、この逆のAEC(Anion Excange Capacity)もわずかながらに存在します。
土壌中の粘土鉱物や腐食にはマイナス電荷の他にも、プラス電荷もわずかながらに含まれています。土壌中のケイ酸や粘土のアルミナがこのプラス電荷の担い手です。このプラス電荷と手を組む養分はマイナス電荷を持つ硝酸イオンや硫酸イオン。これらのマイナスイオン組も微量ではありますが植物の生育には必須な養分です。
日本に多く分布する「黒ボク土(火山灰土壌)」は、アルミナを多く含むため硝酸イオンを吸着しやすく、黒ボク土が肥沃と言われる理由のひとつです。
恐るべし土の機能性
土壌の中のミクロの世界でこんなに高度な科学が起こっているなんて、土の機能性恐るべしです。
*この他にも、土壌の化学性には交換性塩基やpHの知識が欠かせないようなのですが、こちらはまだ理解できていないので整理できてから書こうと思います。
土壌が先だったか、植物が先だったか分かりませんが、いずれにしても両者の長い共存の中で確立させてきた仕組みなのでしょう。
人間が一からこの仕組みを作れ、といっても無理でしょう。既存の土の化学性を借りて、バランスが崩れないようにメンテナンスを怠らず、農業に使わせてもらうことにします。
土壌の物理生 Physical properties of soil