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光合成産物の分配と利用 Distribution of Photosynthetic Products

夏の新梢管理の真っ最中です。この時に頭に入れておきたいのが、光合成産物の分配の考え方です。

参考文献:果樹園芸学の基礎/伴野潔/山田寿/平智

シンク、ソースと分配

葉でつくられた光合成産物(photosynthate)は,師管(sieve tube)を通って各部位に転流し分配される。葉のように光合成産物を供給する器官をソース(source,供給器官),受け取る器官をシンク(sink,受容器官)とよぶ。

果樹園芸学の基礎/伴野潔/山田寿/平智 より引用

シンクは自らの生活や成長のために,ソースから光合成産物を引き寄せるが,分配量は各器官のシンク力(sink strength)によってかわる。活発に成長している,茎の先端部や幼果などはシンクカが強い。とくに春から夏は,新梢の成長と果実の成長が同時に進行しており,限られた光合成産物を器官間で奪い合う競合が避けられない。
果樹栽培は果実生産が目的なので,いかに果実への光合成産物の分配を多くするかが栽培技術上の課題である。しかし,永年生作物として長期間生産を維持するために,樹体成長も確保しなければならないので,栄養成長と生殖成長のバランスを維持することが大切である。

果樹園芸学の基礎/伴野潔/山田寿/平智 より引用

分配を左右する環境要因

光合成産物の分配には,温度などの環境要因も大きく影響する。樹体の温度が一定であれば,果実の温度が高いほど果実のシンクカが強くなり,光合成産物が多く分配される。ただし,果実の温度が高くなると呼吸作用も活発になり,取り込まれた光合成産物が呼吸によって消費されるため,果実に残る光合成産物は少なくなる。したがって,20-25℃程度の温度が,長期的な光合成産物の蓄積には望ましいと考えられる。光合成産物の転流速度は,転流物質や果樹の種類によっても大きくちがい,24~290cm・h-1 程度の幅がある。

光合成産物の利用

各シンク器官に運ばれた光合成産物は,その器官の成長や生活に利用されるばかりでなく,一部はデンプンなどの形で貯蔵される。果樹の地下部や太い枝などに貯蔵された養分は,次年度の春には新梢や花・幼果に再分配されて利用される。したがって,秋に台風や病虫害によって早期落葉すると,樹体内の貯蔵養分が減少し,翌春の新梢,花,幼果の成長が抑制され,結実も低下する。

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