ブドウは冬の間は休眠していて、春にはしっかりと起きて芽がでてきます。
当たり前のように毎年このサイクルを繰り返していますが、どのようなメカニズムで休眠と休眠覚醒を繰り返しているのでしょうか?
参考文献:最新農業技術果樹 vol.8
自発休眠と多発休眠
ブドウを12月から加温した場合と、2月になってから加温した場合では、明らかに2月になってから加温した方が発芽が早く芽の生長も順調になります。早く暖めたほうがいいように思いがちですが、早くから暖めちゃだめなのです。これは、12月と2月では体内の生理的な状態に明らかな違いがあるのです。
12月の段階では温度や土壌水分の条件が適当であったも樹は生長を始めようとしません。これを「自発休眠」の状態にあるといいます。
一方、2月の段階では内的にはいつでも生長を始めることができるが、気温が低いために休眠状態が続いているだけの状態で、「他発休眠」または「強制休眠」と呼ばれ、自発休眠とは区別されています。
自発休眠がいつから始まり、どのように覚めてゆくのかは、実験結果から枝の登熟が進む9月頃から休眠に入り、10-11月上旬に最も深く、その後徐々に打破されて1月上旬頃にほぼ休眠が完了すると言われています。
休眠覚醒の条件
自発休眠の打破に冬の寒さが重要な役割を果たしていることは経験的に知られています。どの程度の低音が有効なのか、どれだけの期間遭うことが必要なのかについては諸説あり明確ではありませんが、各種実験によって知見が貯められています。
一般的には、0度は休眠打破に極めて有効であるが、6度ではほとんど効果がない、また、-1〜0度に20~35日おいてから加温すると発芽率が高まるが、-7度ではかえって発芽が遅れ、発芽率も低くなることが報告されています。
これに加え、夜間の冷え込みで0度の低温にさらされて休眠打破効果が進んでも、日中の気温が極端に上がって15度以上にさらされるとせっかく溜まった休眠打破効果が打ち消されることも報告されており、非常に複雑です。
休眠をコントロールする物質
それでは、このような休眠の開始及び打破はどのような物質の存在によってコントロールされているのでしょうか?
現在の研究では、ABA(アブサイシン酸)をはじめとする制御ホルモンが最も重要な役割を果たしているとされています。この物質は、秋に成葉で生産され、熟枝と芽に送られて芽の休眠を引き起こします。秋が深まって葉が老化、落葉すると、この抑制物質の生産が途絶え、一方では少しずつ分解消失しますが、これに低温が加わるとその現象が一気に進む、という仕組みです。
同時に生長促進ホルモンであるサイトカイニンが母枝や冬芽内に増加してきて、これも休眠打破に大きな役割を果たします。
冬に活動しないようにストッパーが効いていて、このストッパーが外れるとともに、ブースターが効くことによって休眠から覚醒するというイメージです。本当に植物の生きる仕組みはよくできていますね。
冬の雪害・防寒対策 Protection Against Ice Cold in Nagano