ブドウ農家になりたてですが、どうしても主役のブドウの実の出来にばかり気がいってしまいます。
ですが、ブドウは樹体全体がブドウなのであって、実はその中の一部に過ぎず。
「木を見て森を見ず」にならないように、全体を見れる農家になりたいと思っています。
ブドウの物質生産について勉強しました。
参考文献:果樹vol.9 (最新農業技術)
総生産量ー呼吸=純生産量
ブドウは自家栄養生物であり、自分の体を作る物質や生きていくための化合物やエネルギーを自分で作ることができます。その根源は光合成にありますが、作られた物質が全て商品(ブドウの実)になるのではありません。
果樹の物質生産と器官への配分を示した模式図が以下になります。
光合成によって生産された物質(総生産量)は、植物が生きてゆくためのエネルギー消費(呼吸)にも使われ、差し引きで残った量(純正産量)が体に蓄えられます。その純生産量の中でも果実に蓄えられるのはほんの一部。
量的にたくさんの果実を得るには、
物質生産の全体をスケールアップさせる必要があること、加えて、
質的に良い果実を得るには、
エネルギー分配の偏りをなくしてバランスを保つこと
が大切なことがよくわかります。
器官別重量の季節変化
一年の物質生産の様子は分かりましたが、ブドウは一年の中の四季を生きています。一年の中の時系列変化も併せて理解する必要があります。
以下のグラフが、春の発芽期から冬の落葉期までの器官別重量のトレースを示したものです。
発芽を始めると、旧枝、旧根の重量が急激に減少し、その分、結果枝と新根の重量が増えます。
そのうちに、新しくでた芽で光合成を行い、物質の生産量が急激に増加、5月上旬には物質生産量と旧枝旧根の消費量が釣り合って養分転換期となります。
それを過ぎると、拡大生産期に入り、物質生産は真っ盛りを迎えます。その後、成熟期を迎えると新梢の成長は自然と止まり、来年のための貯蔵養分として、旧枝根に貯蔵養分を蓄え始めます。
どの本を読んでも共通することは、収穫後の貯蔵養分の蓄えが次シーズンのスタートダッシュのキーとなるということ。収穫後に自然と葉っぱが黄色くなり、落葉するまで健全な状態を保つことが肝心です。
この理想的な曲線を頭に入れつつ、今年は収穫後も新梢の伸びが止まらないなぁとか、葉っぱが早く落ちすぎな気がする、とか、ブドウの樹が発するメッセージを捉えられる農家になりたいものです。
ブドウの収穫後の作業 The Importance of Post-Harvest Work