ブドウの場合、この樹はまだ若いから暴れやすい、この樹は成木だから落ち着いてる、とよく聞きます。この暴れる、落ち着いてる、というのは主に新梢の伸び具合のことを指します。
樹自体も呼吸して生きている
樹齢が若いと新梢成長が続きやすく、成木になると、落ち着いて新梢の伸びが止まりやすくなる。若木では、幹や主枝が細くて呼吸量が少なく、光合成産物の消費量が少ない。その結果、新梢が大きく伸びるとともに、貯蔵養分が多くなり、翌年の成長が大きくなる。圃場に栽植してから数年間、年とともに指数関数的に樹体が拡大していく。
しかし、樹齢を経ると、主幹、主枝といった骨格枝が太ってくる。これらの骨格枝も生きていくためは、炭水化物(糖)を分解してエネルギーを得ること(呼吸)が必要である。しかし、自らは光合成をしているわけではなく、葉のついた新梢から送られてきた光合成産物を用いて生きている。
骨格枝が太ってくると、呼吸量が大きく増え、光合成産物が消費されるため、新梢の伸びに用いる光合成産物は少なくなり、伸びは減少して樹は落ち着いてくる。樹齢を相当に経ると、骨格枝は非常に太く、呼吸量が大きく成りすぎ、新梢があまり伸びなくなる。これが老木化である。
老木化した樹を若返らせるには、太くなった骨格枝を切り、骨格枝に対する新梢の比率を大きくし、樹体を形成し直す。冬季の長梢剪定で古い側枝を切り落として更新し、新しい側枝をつくっていくのも同様の原理である。