ブドウはたくさんならせたい。しかし、ならせすぎると品質が落ちる。適正収量に関する考え方の参考になる文献です。
参考文献:新版 ブドウの作業便利帳
適正収量(適正着果量)はこうして決める
適正収量は物質生産と果実分配率、すなわち新梢の平均長と密度から決まるのだが、なにぶん研究データが少ない。そこで、簡便法として次のように考えた。
果実へ物質を送る日数が長いほど収量は多くなるはずである。果実の物質量は果実を乾燥した重さのことなので、同じ物質供給量であっても、糖度(乾物率とほぼ同じ)の高い品種ほど適正収量は低くなる。すなわち、開花期から成熟期までの日数と果実の糖度から計算するのである。そのためには、1日当たりの物質供給量がわからなければならない。そこで、デラウェアの多収園の物質生産を基準にした。
LAIの3.11のデラウェア優秀園のデータ、糖度18.5%、4年間の平均収量2400 kgの値を用いて計算した。デラウェアの開花期から成熟期までの日数は80日なので、1日当たりの物質供給量は、0.185(果実乾物率)X 2400 (収量)÷ 80(成熟日数)= 5.55kgとなる。
ブドウの最適LAIは4だから、もう少し大きな値にしてもよいと考えられるが、無難な値として、1日当たりの果実供給物質量を5.5kgに設定した。この値を他の品種にも応用して計算するのである。
計算方法は「5.5 x 開花期から成熟期までの日数 ÷ その品種の糖度% x 100 x = 10a当たりの適正収量kg」となる
シャインマスカットの例を示すと、5.5 x 105(成熟日数)÷ 19(糖度)x 100 = 3039kgとなる。これは、天候のよい9月中に成熟する作型で、開花後1カ月ころにはほとんどの新梢が生長を終え、LAIが4の場合である。
もし、LAIが3しかなければ2500 kg、2であれば1500というようにLAIに応じて加減するが、この換算については、試してみて適正な収量を決めてもらうしかない。
もし、4をこえるようであれば、マイナスになるので、夏季せん定で4になるよう棚を明るくし、収量はやや低くするよう着果量を調節する。