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シャインマスカットの長期保存 Long-Term Storage of Shine Muscat

2022年のブドウの出荷も、無事終了しました。
出荷の終盤は、長期保存ブドウの出荷を行いました。各種保存方法の特徴が少しわかってきた気がします。

長期保存の目的と障害

長期保存の目的は主に二つ。
一つ目は、荷造り作業の平準化。露地ブドウは10月頃に一気に収穫期を迎えますが、荷造りの工数は限られているため、収穫のペースト荷造りのペースにミスマッチがあります。保存を駆使して、一定のペースで荷造り&出荷を行える利点があります。
二つ目は、ブドウの価格上昇待ち。10月は出荷が集中するため値段が下がります。しかし、クリスマスやお歳暮シーズンには需要が増加するので市場価格が上がってきます。出荷をできる限り遅らせて、需要高シーズンにヒットさせることを狙います。

一方、注意しなければならない障害もあります。
主な障害は、軸枯れ灰カビ
軸枯れは文字通りブドウの軸が枯れてしまうもの。見た目も悪く商品価値が下がります。
灰カビは長期保存の1番の大敵。ブドウの表面に茶色の病斑現れ、厄介なことに進行性があります。如何に灰カビを出さずに保存効かすかが、長期保存のキーになります。

灰カビ病の病斑。これを発見するとテンション下がります。

各種長期保存方法

2022年は、我が家では以下の長期保存を実施しました。

  • 常温保存 単独
  • 常温保存 with フレッシュホルダー, バイオコール
  • 常温保存 with フレッシュホルダー, Pプラス鮮度保持袋, バイオコール
  • 冷蔵保存 単独
  • 冷蔵保存 with フレッシュホルダー, バイオコール
  • 冷蔵保存 with フレッシュホルダー, Pプラス鮮度保持袋, バイオコール

常温保存は、温度管理は特に使用せず、土蔵の中に積んでおく保存です。全て冷蔵保存できればベストなのですが、冷蔵設備のキャパに入りきらないものを、少しでも保存を効かせる目的です。
常温保存向けのブドウは、霜が降るギリギリの11月初旬まで収穫を待ったものとしました。

冷蔵保存は、強制通風式冷蔵庫で保存するもの。凍らないぎりぎりの低温にして、ブドウの劣化を防ぎます。我が家はダイキンの冷蔵庫を使用で、設定温度は0.5度に設定です。今年はブドウが出来上がった10月15日頃に収穫したものを冷蔵庫に投入しました。

冷蔵庫にブドウを格納してゆきます。我が家の冷蔵庫は約4000房のキャパシティー

シャインマスカットを長期貯蔵で時期ずらし The Grapes Sleep in the Fridge

バイオコールは、ヒノキから抽出したフィトン・チッドとゼオライト石を原料とした鮮度保持剤。腐敗の原因となるエチレンガスやその他のガスを吸着してくれるそうです。

バイオコール。悪さをするガス達を吸着してくれる、、、らしい。

参考 バイオコールA日本食糧新聞

今年、新たに採用したのが、フレッシュホルダー
ブドウの軸に水の入ったタンクを刺して、保存中の水分補給を行います。軸枯れ防止や、ブドウの乾燥防止が狙いです。

フレッシュホルダーをつけたブドウ。切花の鮮度保持でも使われていますね。つけるのがかなり面倒くさい。

参考 切花・ブドウ鮮度保持容器有限会社フレッシュ

もう一つ、新たに採用したのが、Pプラス鮮度保持袋。特殊な袋でブドウを覆い、低酸素・高二酸化炭素状態を保ちます。ブドウに窒息状態になってもらって鮮度をキープする目的です。

Pプラス袋で覆ったブドウ。私は間違えて箱の外側を覆ってしまったのですが、正しくは箱の内側に袋を置いてその中にブドウを入れるとのこと。一枚約300円。高い!

参考 P-プラス住友ベークライト

長期保存のパフォーマンス

今年、各種保存を試してみて、保存可能期間のパフォーマンスはざっくり以下の感触でした。

  • 常温保存 単独 >>1週間 
  • 常温保存 with フレッシュホルダー, バイオコール >>2週間 
  • 常温保存 with フレッシュホルダー, Pプラス鮮度保持袋, バイオコール  >>3週間 
  • 冷蔵保存 単独  >>2ヶ月 
  • 冷蔵保存 with フレッシュホルダー, バイオコール >>3ヶ月 
  • 冷蔵保存 with フレッシュホルダー, Pプラス鮮度保持袋, バイオコール  >>2ヶ月*灰カビ多発でNG 

フレッシュホルダーの効果は抜群。軸枯れの進行はほとんどなく、プリプリした美味しそうなブドウのままで長期保存可能でした。タンクを刺す手間がかかるのがマイナスポイントですが、長期保存の強い味方になってくれそうです。

Pプラス鮮度保持袋は、劣化防止の効果は実感したものの、冷蔵庫の中ではどうしても結露が発生してしまい、灰カビの多発がありました。この袋は、冷蔵庫では使用せず、常温保存での使用が相性良いようです。

バイオコールは、、、効果の実感はあまり感じられず。我が家は3ヶ月で全て出荷しきってしまったのですが、これを超えたもっと長期の保存では効果を実感できるのかもしれません。おまじない目的で入れるのはアリかと思います。

もう一つ、長期保存で重要なのは、保存に向けるブドウの品質です。今年はブドウの裂果が多発してしまった年でしたが、やはり、裂果のあったブドウは、保存中の障害も多いし劣化のスピードも速い。ベースとして、年間を通してブドウの手入れに力を入れて良いブドウを作ることが最も重要。基本の大事さに気付かされる長期保存実施でした。

3ヶ月保存してもまだまだプリプリ、味も良し!

今年のデータを来年に活かす

今年は様々な保存方法を試して、たくさん良いデータが取れました。しっかり記録して、来年のブドウ栽培&安定出荷に繋げたいものです。今年は、年末までの保存でしたが、来年は今年のデータを活かして更なる保存にトライして、年始までの出荷継続に挑戦したいと思っています。
そのためには、やはり、良いブドウを作ることが何より肝要。冬はしっかり体を休めて、来春のブドウ栽培本格始動に備えたいと思います。

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