ブドウの休眠期の間に行っておかなきゃ行けないことの主な二つは、仕上げ剪定と芽キズ入れです。
延長枝の新芽がしっかり芽吹くように
芽キズ入れは、延長枝の新芽に対して行います。
幼木のうちは、圃場内に枝を巡らせるまでに何年かかかります。去年伸びた新梢(結果母子)を剪定せずに残して、延長枝として張り巡らします。その延長枝の芽がしっかりと芽吹くようにする一手間が、芽キズ入れです。
膨らんできた新芽の近くに、専用のハサミで傷をつけます。
なんで傷で芽吹くのか、、、簡単にいうと、ブドウを騙しているのです。
自分が頑張らなきゃと勘違いさせる
ブドウを含め、植物が生きている目的は、子孫を残すことと、陣取り合戦です。
自分の陣地を広めることが大命題。そのために、頂芽優勢というシステムがあって、先端の芽が優先的に成長する機能が備わっています。切込隊長にエネルギーを集中させて、陣地を広げるもので、言い換えれは、2番目、3番目の芽は成長が抑制される、極端な場合は芽がでません。
このメカニズムは、「オーキシン」と言う植物ホルモンが関係していて、先端の芽が出ると、オーキシンという植物ホルモンが根元方向に流れて、根元のほうは芽が出なくなるという仕組みです。
枝の先端のみ芽が出て実がなる、これではブドウ農家は生きてゆけませんので、全ての目に芽吹いてもらわなきゃいけません。芽キズを入れると、その芽が自分が先端の芽だと勘違いし、活発に芽吹いてくれます。先端から流れてくるオーキシンが傷の部分で遮断されて、先端ではない芽も芽吹くことができるのです。
芽キズハサミでサクサク作業
この芽キズ入れを行うのに欠かせないのが、芽キズハサミです。
このハサミの存在をブドウ農家以外で知っている方は、よほどの園芸マニアだと思います。子供の頃に作業場で見かけた時は、「なんだこの出来損ないみたいなハサミは」と思っていました。この中途半端さがミソなのです。
傷はそれぞれの芽の先端側に、この鋏をつかて入れていきます。オーキシンは先端から流れてくるので、この流れを遮断するために上流側に傷を入れるのが必須です。深さの目安はしっかり組織に届くように2cm。深すぎるとそこから枯れてしまうし、ビビって浅すぎると効果ない。ある程度思い切りも必要です。
水上がりの前、3月中旬までに行いたい
芽傷を入れる時期の目安は、水上がりの前、と教わりました。
早すぎると傷から凍害が入って枯れてしまう。遅すぎて水上がり後になると、大事な貯蔵養分を含んだ樹液が流れ出てしまって良くない。例年は大体3月中旬ですが、その年頃に水上がり時期は異なるので頃合いを見計らう必要があります。
今年は雪が多く、水上がりも例年より遅いだろうと油断していたのですが、ここ最近急に気温が上がって雪解けも進み、一部の圃場では水上がりが確認されてきました。
ちょっと焦りつつも、丁寧に確実に、芽傷入れを進めます。