参考文献:果樹園芸学の基礎/伴野潔/山田寿/平智
成長の促進と抑制の使い分け
果実の成熟は,外生の植物ホルモン処理によって影響を受ける。そのため,さまざまな果実の成熟調節が実用的なレベルで検討されてきた。
ブドウやキウイフルーツの未熟果に,ホルクロルフェニュロンなどのサイトカイニン活性をもつ物質を処理すると,果実の肥大が促進される。
ブドウ果実の成熟はオーキシン(NAA)処理によって遅れ,糖の蓄積が抑制されるが, アブシジン酸(ABA)を処理すると逆に促進される。また,成熟開始期のABA処理はプドウ果実の着色(アントシアニン生成)を顕著に促進するが,NAAを処理すると逆に抑制される。これはABAとNAAがアントシアニン生合成の鍵酵素(key enzyme)であるフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)の活性を促進したり抑制するためと考えられている。
エチレンやエチレン発生剤処理は,モモやイチジク果実の成熟を促進する。イチジクは果頂部にオリーブ油などを塗布する油処理(oiling)を行なうと成熟が促進されることが古くから知られているが,油の成分である 脂肪酸が果実のエチレン生成を促進するためと考えられている。