春の新梢生長には、さまざまな環境条件が影響を与えます。
大きな影響を与える因子に、土壌温度と土壌通気があります。
参考文献:最新農業技術果樹 vol.8
地温と新梢生長
地温は根の養分吸収、各種養分やホルモンの合成、貯蔵養分の転流などを直接的に支配するので、発芽及び新梢の生長に大きな影響を与えます。鉢植えのデラウェアを、地上部のみを暖房して地下部を戸外に置くと、発芽が遅れ、新梢や花穂の発育も不良となります。
しかし、鉢全体を加温すると、発芽数も多く、新梢の生長、花穂の生育も正常になり、地下部のみを前もって加温してから地上部のみを暖房すると発芽がさらに早まり、生長も良くなります。
また、マスカットを用いた実験では、地温が15度以下では新梢の生長は不良であり、25~30度で最も旺盛に生長し、35度では高すぎます。また地上部と地下部温度を組み合わせた実験では、気温が高い場合には地温も高くないと生長を悪くなることが示されています。
これは、葉の蒸散が盛んになるとそれに見合う根の水分吸収が低地温ではできないためです。
土壌通気
土壌の表層に固い層ができたりして土壌の通気が不良になると、根は十分に呼吸できなくなります。通気の良い土壌中の酸素濃度は、空気中濃度と同じく約20%です。しかし、10%以下になると根の呼吸低下に伴い養水分吸収などの生理作用が低下します。
酸素不足の土壌では、リン、マグネシウム、カリウムの吸収が特に阻害されており、結実樹では果実の肥大、成熟に著しい悪影響を及ぼします。
春の暖かい気温だけでなく、暖かい土が、芽や新梢の生長のトリガーになっていることを忘れてはいけません。
温度とブドウの新梢生長 Temperature and Shoot Growth