[農業情報マッチョになりたい] ブドウ農家のブログです

農薬がもたらしたもの What Pesticides Have Done to Us

農薬の本を読んでいて、印象的なことが書いてありました。
「現在では農薬を使わずに人類の活動を維持発展することは実質的に不可能な状況となっている」
当たり前なことではあるのですが、なかなか知られていない事実です。

参考文献:新版 農薬の科学

農業がもたらした変化

生命体の活動を支えているのは外部からの供給エネルギーです。植物では主として光。動物では、光によって生産された植物です。
人類も狩猟採集でエネルギー源を得てきましたが、これを大きく変えたのが農業です。農業というシステムが安定的な食糧供給を可能にして、人口が増え、文明が誕生しました。
ですが、ながきの間、農業による生産はとても不安定なもので、気候変動や環境変化、およびこれらによってもたらされる病害に対して、非常に脆弱でした。
メソポタミア文明は小麦の高い生産性の上に成り立っていましたが、環境の変化によって衰退し、今や廃墟が残るのみです。

農薬がもたらした変化

農業開始以来、栽培方法の改善や、灌漑設備の導入で生産性を上げてきましたが、病害虫起因の不作には悩まされ続けます。その病害から植物を守るためにできることは、神に祈る、お祓いする、などしかない時代が続きました。病気の元となる微生物自体、19世紀になってからなので、無理もありません。
ここで農業に革命を起こしたのが農薬です。19世紀末から20世紀にかけて、分子生物学と化学の理解が急速に発展し、さまざまな物質の化学構造や、植物がなぜ病気になるのかがわかり、それを基盤に農薬が発展。農薬によって農業生産が圧倒的に安定し、人類の文明も再び大きく前に進みます。

以降、農薬の使用を前提に農業が営まれるようになり、収量確保には農薬が必要不可欠になっています。
以下の図は、それぞれの作物が農薬を使用しないで栽培した場合に、どの程度収穫が減少するかを示したものです。
どの植物もかなり減収、果樹類では100%減収に近いです。

新版 農薬の科学 より引用

食糧の安定供給を可能にし、人口の増加をもたらした要因の一つが農薬です。
現在では農薬を使わずに人類の活動を維持発展することは実質的に不可能な状況となっていると言えます。

農薬というと、負のイメージが強い中で現在も農薬が使用されている理由はここにあります。
負のイメージがあるからこそ、膨大なアセスメント(人間に使われる医薬品と同様、物凄く厳しい評価です)を経て登録されるものになっているわけで、正しく負のイメージを持つことは悪いことではないかもしれません。

これで農薬散布します

私も、ブドウ栽培で各種農薬を使います。
美味しくて見た目も美しいブドウを消費者に届けたい。農薬の使用は不可欠です。
農薬の使い手として、正しく使えるように、正しい知識を身につけたいと思っています。

ブドウ農家と黒とう病の戦い Fight against Plant Disease

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