[農業情報マッチョになりたい] ブドウ農家のブログです

ハウスの補強 農家は時に大工である Greenhouse Reinforcement, Sometimes farmers are carpenters

就農した時に、父親に言われました。”農家は植物を触ってるだけが仕事じゃない。配管、大工、機械整備、経理、なんでもできるようにならにゃいかんよ”
今日はその言葉を実感する仕事、ハウスの補強に手をつけ始めました。

雨除けハウスとは

ブドウの栽培は、露地栽培(雨さらしのワイルドな栽培)に加えて、温室栽培も盛んです。ハウスにビニールをかけて重油をボイラーで焚いて加温してブドウを栽培するものです。生育速度を早めて、早出しの利を狙うものです。
ハウス加温とは別に、ビニール被覆は行いますが、加温しない栽培もあります。”雨除け”と言われていて、露地と加温の中間に位置します。その名の通り、雨を遮断する目的でのみ、ハウスをかけます。
とはいえ、雨除けハウスには、いろいろな目的がありまして、主に以下の狙いがあります。

  • 雨水遮断で、病害リスクの低減
  • 雨水遮断で、土壌水分をコントロールできる
  • 梅雨時期の作業性アップ
  • 生育前進で、繁忙期の時期ずらし

病害リスクの低減:ブドウの病気の大多数は、雨水を媒介して伝播します。ブドウが雨に濡れないことで、病気にかかりにくくなります。

土壌水分をコントロールできる:雨ざらしの露地栽培では、土壌水分は雨水頼りで、これはまさに神頼み。ちょうどいい塩梅の年はいいですが、雨の多い年は水分過多になり、裂果等の障害を引き起こしてしまいます。雨除けをかけることで、雨水はキャンんセルできて、灌水によって供給水分をコントロールできます。*逆にいうと、灌水の手間は増えるので要注意です。

作業性アップ:これは単純に、雨に濡れずに作業ができるということ。雨が続く梅雨時期には、誘引、ふさきり、といった作業がぶつかりますが、雨に濡れながらの作業は非常に切ないものがあります。また、お手伝いさんに入っていただく時も、急な雨の日は、雨除けハウスに入ってもらうといった、取り回しも可能になります。せっかく来ていただいてるのに、濡れてもらうわけにはいきませんので、気持ちも楽です。

繁忙期の時期ずらし:この利点が、雨除けの一番の目的だと思っています。ビニール被覆を行うことで、露地に比べて積算温度が多くなるため、ブドウの生育が早まります。そのことで、ふさきり、誘引、摘粒、の夏の三大作業の適期が、露路よりも1~2週間早まってくれるのです。雨除けから取り掛かって、作業が終わる頃にちょうど露地の適期がきて、露路の作業に取り掛かる、という流れが作れます。人手不足の我が家のような小農家にとって、この利点は絶大です。

ハウスに中柱を入れて補強

我が家も十数年前までは、加温、雨除けをおこなっていましたが、父母の高齢化に伴って、栽培面積を減らしつつ、近年は露路のみでした。しかし、私が就農し面積も増えてきたので、今年から雨除け栽培を復活させます。というのも、昨年の繁忙期がトラウマレベルできつかった、、、今年は雨除けをかけて、少しでも心のゆとりを持ちたいというのが本音です。

ところで、雨除け復活させる圃場のハウスには一つ問題が。中柱(アーチの中央を支える柱)がないのです。父親は中柱なしで雨除けやっていたのですが、強風は吹くとグラグラして不安、かつ、当時に比べてパイプの劣化もあり、雨除けかけるなら中柱入れとけ、とのアドバイスです。ハウス倒壊の被害は甚大なので、春の時間のあるこの時期に、中柱入れを行うことにしました。

中柱なしの状態。アーチのみでビニールを支えることになり、強度に不安あり。

中柱入れの手順

中柱入れの手順は、ざっくり以下。

  • 地面に穴を掘る
  • 中柱を仮で入れて長さを決めて
  • 決めた長さで切断
  • 再び柱を入れて垂直を出して
  • 金具で固定。土を戻して足を埋める。
なかなか見ない、ブドウ畑の土の中。根っこの健康状態も観察もしつつ作業を進めます。

ここで活躍してくれるツールをいくつかご紹介。

棚持ち上げ棒:棚パイプはブドウの重さでたわんでますので、これで規定の高さまで持ち上げます。ラチェットがついていてこれを回すとかなりの重さのものも持ち上げられます。

棚持ち上げ棒。ラチェットをグリグリして持ち上げます。

発電機と切断機:畑にこれらを持ち込んで、その場でパイプを切断することができます。100Vのパワーが必須の作業です。

発電機と切断機。農家って色々持ってるんですね。

農家しか味わえない景色

ハウスの上で作業していると、目に飛び込んでくるのが北信濃の絶景です。たった4,5メートル視点が変わるだけで、山々がこんなにも綺麗に見えるものかと驚かされます。こういった景色を見ながら作業してると、長野に生まれてよかった、農家になってよかった、と実感します。周りの先輩農家さんたちも、ハウスに登るのが苦じゃないっぽいんですよね。きっと皆さん、この景色が好きなんだと思います。

中野市のシンボル高社山
北信五岳 まみくとい。左から、斑尾、妙高、黒姫、戸隠、飯綱。(飯綱は映ってません)

コツコツ、ゆっくり、安全第一

父親に教わりながら作業を進めて、半日で6本の中柱が立ちました。このハウスの中柱は72本。先は長い!
他の作業も並行して進めるのでコツコツ進めれば10日くらいかかるでしょうか。
桜が咲く頃までにはハウスをかける準備が整うように、安全第一で作業を進めようと思います。

半日で6本。。。先は長い!

自分で補強したハウスにビニールがかかって、その中でブドウが育つ季節が来るのが楽しみです。

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