ナシやリンゴ、ブドウ、カキ、モモなどの落葉果樹は、落葉して翌春芽が出てくるまでの時期が休眠期、芽が出てから秋に落葉するまでが生育期です。病害虫防除のメインは生育期と思われがちですが、休眠期も同じくらい重要なのです。
参考文献:だれでもできる果樹の病害虫防除 ラクして減農薬 [ 田代暢哉 ]
病気の一時伝染と二次伝染
病気の一次伝染とは、前年の葉(落葉を含む)や枝に病原菌が棲息していて、暖かくなればこれらの病原菌が増殖を始め、発芽してきた葉や枝に感染し発病することです。
二次伝染とは、一次伝染で発病した新葉や新梢の病斑上で病原菌が増殖し、周りの新葉、新梢、果実に伝染し、発病してゆくことです。
一次伝染では伝染源の病斑は前年に作られているので古く、病原菌の量も大きくありませんが、二次伝染では新鮮な病斑上に大量の胞子や細菌が形成されるので、一次伝染の発病に比べて何十倍も激しいものになります。
被害が見えない休眠期の防除が肝心
一次感染を抑えるには、発生源の除去(圃場衛生)の徹底が重要です。目についた発病葉や発病枝は全て取り除いて、埋めるか燃やします。畑の見回りをするたびにこの地道な耕種的対策を積み重ねることで、病原菌の絶対量を減らして、一次感染を可能な限り抑え込みます。
その上での最後の仕上げが薬剤散布です。この休眠期防除の効果は、生育期散布の効果に隠れてなかなか実感できませんが一次感染を押さえて生育初期の伝染源量を低下させることでも重要な役割を果たします。とりわけ、生育初期に天候不順が続き、発芽から第一回目の生育期散布まで間が空いた時は、大量の感染が起きてその後の防除がとても難しくなります。芽が出てからでは間に合わないのです。
しかし、休眠期に薬剤散布をしておけば、発芽から生育散布まで間が空いても大丈夫です。
薬剤防除は、あくまでも予防措置。積極的な殺菌効果があるわけではなく、広がらないようにする効果を期待するものです。どうせ予防するなら、可能な限り初期から策をとってゆくことが重要になります。
かといって調子に乗って、やみくもに休眠薬剤散布を行ってはいけません。
デリケートな時期だけに、薬剤選び、濃度、散布時期にはいつも以上に気を使う必要があります。
病害虫防除の考え方と手段 Grand Concept and Means of Pest Control