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水ポテンシャルと給水の仕組み Water Potential and Water Supply Mechanism

参考文献:果樹園芸学の基礎/伴野潔/山田寿/平智

水ポテンシャルの概念

土壌中の水分状態をあらわす方法として,含水比(単位重量当たりの土壌に含まれる水分量)や水分率(単位容積当たりの土壌に含まれる水分量)がある。しかし同じ含水比や水分率であっても,土壌の種類や状態によって土壌粒子に強く吸着していたり,比較的大きな空隙に弱い力で保持されているなど,水の存在状態に大きなちがいがある。
このちがいをポテンシャル(位置)エネルギーとしてあらわすのが,水ポテンシャル(water potential)の概念である。水ポテンシャルの概念を用いると,土壌中や植物体内の水分状態を,土壌ー植物一大気と連続した1つのシステムととらえることができる。
純水の水ポテンシャルを0とするので,さまざまな溶質が溶けている土壌水や植物体内に含まれている水の水ポテンシャルは負数になる。また,水ポテンシャルは土壌水が最も高く,植物大気の順に低くなる。3者間の水の移動は,水ポテンシャルの高いほうから低いほうへと平衡になるまで続くが,これによって植物は土壌から吸水することができる。

水ポテンシャルの単位と測定

水ポテンシャル(1/1)は通常,圧力の単位であるPa(パスカル)またはbar(バール,1bar=0.1MPa = 100 KPa)であらわされるが,土壌の水分ポテンシャルは,測定にテンシオメータ(tensiometer)をよく用いるのでpF値で示すことも多い。pF値は,土壌水の自由エネルギー(F)を水柱の高さ(cm)に換算し,その絶対値の常用対数で示したものである。たとえば,100cmの水柱に相当する自由エネルギーのpF値はlog 100=2である。最近は,換算式 xpF=log (-10.2y Pa)を用いて,SI単位であるPaに換算して示すことも多い。

水ポテンシャルと植物の吸水,蒸散

植物が根から水分を吸収して葉から大気中に放出する現象を蒸散(transpiration)というが,この一連の過程を水ポテンシャルの概念で説明すると次のょうになる。
土壌中に含まれる水は,土→根→茎→葉→大気の順に,水ポテンシャルの高いほうから低いほう(pF値の小さいほうから大きいほう)へと移動する。

pF1.5 –4.2程度の土壌からpF3.0 ~3.7程度の根,pF3.0 ~4.0程度の茎を通って,pF3.5 ~4.3程度の葉に移動し,葉の裏の気孔からpF5.5 ~6.0程度の大気中ヘ水蒸気となって出ていく。
葉と大気の水ポテンシャルの差は,ほかとの差にくらベてきわめて大きいため,水は葉(気孔)から連続的に蒸発して大気中へ出ていく。それによって道管に上方から負の圧力がかかるため,根からの吸水が持続する。
水ポテンシャルは,浸透ポテンシャル(ψs), 圧ポテンシャル(ψp), マトリックポテンシャル(ψm), 重カポテンシャル(ψg)の和としてあらわされる。

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