ブドウの誘引が間も無く始まります。ブドウ栽培も、りんご栽培も、樹が気持ちよく光合成できるように枝をきれいに並べるのが農家の大事な仕事です。
参考文献:果樹栽培 実つきがよくなる「コツ」の科学
誘引とは
「誘引」とは、棚や支柱などに枝を固定することです。発生したばかりの緑色の枝や落葉した茶色の枝を誘引すると、外観を美しく整え、光合成や風通しをよくすることができるので、特につる性の果樹では重要な作業といえます。
つる性以外の果樹でも、枝を誘引すると翌年の実つきを向上させることができます。というのも、枝を誘引する角度によって、春以降の若い枝(新梢)の伸び方が異なるためです。まっすぐに立てた枝(図A)からは、先端付近から1-2本の非常に長く太い枝が伸びます。斜めに誘引した枝(図B)からは、先端-中央付近までAより短い枝が発生します。そして水平に誘引した枝(図C)からは、枝のほぼ全域から、A、Bに比べて短い枝がたくさん発生します。
徒長枝は実つきが悪いことが多いので、放置や剪定・誘引後、春-秋に立てた枝(A)ばかりになると、徒長枝が多く発生し、収穫量に影響します。そこで、果樹ではBやCのように斜めから水平に枝を誘引して、新しく発生する枝の伸びを抑えることが効果的です。なかでも、リンゴ、ニホンナシ、血即類、ウメ、モモ、サクランボなどの果樹は、中くらいから短い枝にたくさん果実がつく傾向にあるので、剪定後の枝を斜め-水平に誘引することで、実つきの改善効果が期待できます
誘因の方法
枝を斜めから水平に誘引するには、枝を固定する場所を確保する必要があります。ブドウやキウイフルーツ、ニホンナシなどを棚で栽培する場合は、ひもなどで棚に直接、枝を誘引しましょう。フェンスや棒状の支柱を設置してある場合も同様です。また、周囲に太い枝がある場合もひもなどを引っかけて誘引できます。周囲に太い枝がない場合は、地面に杭を打ってひもで引っ張ります。
実つきを改善するための誘引作業は、冬-早春の剪定と同時に行います。枝の発生前に誘引したほうが、効率的かつ計画的に枝の配置ができ、枝の無駄な伸びを抑えられます。ブドウやキウイフルーツなどつる性の果樹は、次々に伸びる枝を固定しないと外観が乱れるので、新梢が伸び次第、誘引します。
なお、枝を同じ場所に何年も固定し続けると、ひもなどが枝に食い込み、枝が枯れる原因になります。毎年、剪定の際にはひもなどを交換し、誘引し直すとよいでしょう。また、園芸用ビニールタイなど、針金の入った素材を使用すると、枝に食い込むのでなるべくひもを用います。