参考文献:果樹園芸学の基礎
果樹の成長と植物ホルモン Fruit Growth and Plant Hormones
アブシジン酸の生理作用, 成長抑制
アブシジン酸(abscisicacid; ABA)は,オーキシンやジベレリンなどの成長促進ホルモンの作用に拮抗して成長を抑制する。ABAは命名の由来(器官離脱や生理的落下を意味するabscissionが由来)にもなった器官離脱促進作用をもつが,これはABAの直接の作用ではなく,ABA処理によって合成が誘導されたエチレンの働きによる。また,発見当初は休眠芽の形成にABAが関与しているとされていたが,植物によっては関連がみられない場合もある。
これらにかわるABAの代表的な生理作用は,水不足などに対応した気孔の閉鎖で,サイトカイニンとともに気孔の開閉を制御している。また,ブドウやカンキツなどの着色現象との密接な関係も知られている。
近年,微生物の大量培養からABAを抽出する技術がすすんでいるが成長調節剤としてはやや高価で未登録のため,実際生産での利用はない。