[農業情報マッチョになりたい] ブドウ農家のブログです

農学部というところ School of Agricultural Sciences

学生時代は農学部に行っていました。
農学部。聞いたことあるけどなんだか捉え所のない印象ある方多いと思います。
自分が在籍していたのはもう10年以上前になるので、最新の状況とは言えないと思いますが、農学部ってどんなところなのか、ざっくりご紹介します。
農学部ってなんか気になってるんだよなぁという学生さん、生物について専門的に学んでみたいという社会人シニアの方、少しでもご参考になればと思います。

理系の花形ではありません

農学部の方に怒られるかもしれませんが、理系の花形とは言えません。
XX農業大学といった農学メインの大学は話は違うと思いますが、私が行っていたような総合大学では農学部は目立たない存在。農学部の建屋は、キャンパスの中でも端っこでひっそりと佇んでいました。端っこなので、他学部の人たちはあまり近づかない。農学部ってどこにあるのか知らない学生も多かったくらいです。
自分の通っていた大学は自動車産業が盛んな地域だったので、工学部が花形。食堂で見かけるキラキラした工学部生を羨望の眼差しで見つめつつ、自分はひっそりとした農学部があってるなぁ、と思いながら過ごしていたのを覚えています。

男女比は理系の中では珍しく1:1。先進的です。
1,2,3年では基礎となる生物学、物理学、化学、(とあとバイト)をみっちりやって、4年から研究室に入ります。

後にも書きますが、”農”ってつくけど、”農業”とダイレクトに繋がってる訳ではありません。
実際、知りうる中で同級生に農家の倅は自分だけでした。
就職先も、食品、製薬が多い。公務員やメーカーや商社に行く方も多々おり様々。
(私は農家の倅で農学部卒だけど、製造業に就職。人生何があるかわかりません)

“農”ってつくけど、農業だけじゃない

自分は実家が農家で、高校の時も生物の授業が一番好きでした。
理系でしたが、数学や物理はからっきし苦手だったので、んじゃ農学部でしょ、という感じであまり深く考えずに農学部に行きました。
なんとなく、”農”ってつくし、農場とかに行って農業のやり方を学ぶのかなぁと思っていましたが、全く違いました。
もちろん農学部の中でも専攻によって色々で農業メインで学ぶ分野もありますが、私の選んだ応用生命科学(たぶん世の中の農学部の中では一番人数が多い学科)では、皆さんがイメージする農業(畑で作物を育てる)とはダイレクトに繋がってなくて異分野です。
実際、私の在籍していた農学部も附属農場ありましたが、大学院含めて6年通って農場に行ったのは新歓コンパの時の一回だけでした。

では、農業じゃなくて、何を学ぶかといいますと。。。

生物が生きる仕組みを学ぶ

ざっくりいうと、生物が生きる仕組みを学びます。かっこよくいうとバイオテクノロジー。
農というと、植物のイメージありますが、生き物全般です。動物、植物、菌、などなど。それらがどうやって生きてるかを勉強するのがメインです。
私が選んだ研究室は植物系でしたが、植物はむしろマイナー。動物や菌の研究がメインの研究室の方が多いくらいでした。
生き物がどうやって生きてるか知りたい、知れたらそれを応用して世の中今より良くなるんじゃね?という概念と思っています。

具体例を一つ。私が所属していた研究室のテーマは、
植物のストレス耐性
かいつまんで言いますと、
植物は塩などのひどいストレスにさらされると死にます。でもある程度のストレスに耐えますし、過酷なストレス環境下で生きている種もいます。彼らはストレスをどうやって感じて、どんな遺伝子がパワーを発揮して、どうやって耐えるか。
ーーーかなりステップがありますがーーー
その仕組みがわかって、そのパワーを上手く使えばストレスに強い植物が作れる、かも
ーーーもっとステップはありますがーーー
最終的には例えば塩水(海水)で作物が育てられれば、食料問題が解決してみんなハッピーになれる、かも

ということを目指す研究室にいました。
最終目標に辿り着くにはかなりの飛躍が必要ですので、実際にやっていたのはどうやってストレスを感じてどう耐えてるかを知るための基礎研究。基礎研究を重ねてジリジリと最終目標に向かう感じです。

どんな学生生活かというと、主に、遺伝子研究の材料となる大腸菌や酵母や藻のお世話。彼らの生活リズムに合わせて人間が生活してました。特に大腸菌さんは約12時間周期のライフサイクル。人間の生活リズムなんて知ったこっちゃなく、お世話をサボると死んでしまうので、夜でも休みの日でも彼らのお世話に明け暮れる日々だったのが一番印象に残っています。

最近の身近なキーワードで言うと、新型コロナの感染検査でニュースでもよく耳にする”PCR (Polymerase Chain Reaction)” 特定の遺伝子を一定量以上に増幅させる技術です。
このPCR、学生の頃に、死ぬほどやって、死ぬほど失敗しました。ニュースで聞くたびに当時の記憶が蘇ってちょっとブルーになります。と同時に、あの繊細な気を遣う作業を毎日膨大な量をこなしてくださってる検査機関の技師の方々に頭が下がります。農学部生の方にはこの気持ちわかっていただけると思います。。。

畑ちがい上等!

なかなか、学生時代に勉強したことがその後の人生の生業と直接結びつくことは少ないかもしれません。特に農学部は、学んだことを就職後に直接生かしずらい学部、なんて切ないこと言われます。ですが、無駄なことはありません。例えば、極端な例ですが、自分のことで言いますと、

農学部卒業後、全くの畑ちがいの半導体関連製造業の職つきましたが、トランジスタって生物でいうタンパク質を使った情報伝達の仕組みとそっくりだなぁという視点を持てたりしました。
飯食って寝るだけで、電源コードも繋がずに、超精密デバイスを無意識に作って維持までしちゃってる生物ってすげぇ。逆方向で言うと、途方もない時間をかけて進化してきた生物の仕組みを工業品として作っちゃう人間のテクノロジーってすげぇ。

その後、農家になりました。これは農学部と同分野と思いきや、残念ながら大学で学んだ応用生命科学は農産物栽培や営農には全くといっていいほど関係ありません。
ですが、ブドウを見ながら、「さては今あなた方は光合成に必死ですね」って語りかけちゃったりして、植物が生きてる仕組みがわかってると楽しいです。とはいっても、農学部で勉強したことはほとんど忘れてしまったので、農閑期になったら昔の教科書引っ張り出して、もう一度勉強し直さなきゃなぁと思っています。

*農業に関していうと、座学も大事ですが実技が何より。両親に教わりながら今はブドウ栽培という実技に励もう。

農学部、おすすめです。

デジタル化、IT化、で生活はどんどん便利になって行きます。
ですが人間は生物です。お腹は空くし、健康でいたい。人間とそれを取り巻く生物が生きる仕組みを勉強する農学は不滅です。
農学部、おすすめです。進学先の選択肢の一つになれば嬉しいです。
それでは!

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