収穫量を多くするためにたくさん実をならせて採れるだけ取ればいい、と思いがちですが、それは大きな間違いです。実以外にも、樹体維持にもエネルギーが必要なわけで、そちらにもエネルギーを回さないと、のちのち痛い目に遭います。
成長の要因とバランス
呼吸は酸素を使って糖(炭水化物)を代謝し、エネルギーを生み出す過程である。光合成で得られた炭水化物を樹体の各部位が消費して呼吸し、その部位でエネルギーを得ることで、樹体の維持、成長や拡大、果樹生長が行われる
果樹栽培では、以下の三つの分配バランスを取ることが重要である。
- 樹体の維持と新梢成長(栄養生長)
- 果樹生産(生殖成長)
- 貯蔵養分
果実を多く実らせると、果実生産が多くなり、栄養成長と貯蔵養分が少なくなる。結果として翌年の樹勢は弱くなる。果実の結実が少ないと、栄養成長と貯蔵養分が多くなり、ブドウでは新梢成長が遅い時期まで続くとともに、貯蔵養分が増えるため、翌年の樹勢は強くなる。
なお、土壌中に窒素が多いと、新梢は伸びる傾向が強く、栄養成長が強くなる。また、根を含む樹体の正常な生育には適度な土壌水分と酸素が必要であるが、降雨、灌水が多いと、新梢の成長が強く、果粒も肥大する。