[農業情報マッチョになりたい] ブドウ農家のブログです

農業と分散投資 Farming and Diversified Investment.

投資の世界では、分散投資が大事ってよく言われます。
ブドウ農家を始めてみて、農業と分散投資って共通することたくさんあるなぁと思ってます。
どのようなところが共通しているかといいますと—

金融資産投資先の分散

一般的にリスク回避の観点から、資産の投資先はなるべく分散させた方が良いと言われています。
預金、株式、債券、不動産、仮想通貨、コモディティ。株式の中でも投資する国、セクター、などなるべく分散させた方が変動に強くなります。明日のことは誰もわからないものですが、どれかが大きく値動きしても、分散しておけば全体としてのダメージは少なくて済む、致命傷をおわなくて済むという考え方です。
短期での大きなリターン狙いが目的の場合は、分散なんかしないで自分の信じた投資先に一点集中して勝負に出るのが正解と思うのですが、長期保有で数十年後のリターンを期待する場合は、特に重要になります。
*そもそも投資なんてギャンブルで、貯金が一番、ということをおっしゃる方がいます。私の母ですね。
もちろん否定はしません。でも考え方を変えると、貯金オンリーの方がJapan Yenに一本投資分散なしでよっぽどギャンブラーともいえます。元本補償が固いので額面上は目減りしませんが、インフレが進めば、使える資産としての価値は減ってないとは言い切れません。今の円預金は超低金利でインフレリスクをカバーできてるとは思えません。

農家の分散投資

さて、この分散投資、農業に置き換えてみるとどんな感じになるかといいますと、

  • 圃場の場所を分散
  • 栽培する品種を分散

がすごく似ているなぁと思いました。先人農家の皆さんはうまい具合に分散を取り入れて営農している賢者だと思います。

中野のシンボル高社山の山裾に広がる果樹園です。美しい。

圃場の場所を分散

ブドウ農家の場合ですが、圃場はあまり大きくなく一反歩(約300坪)ほどの圃場を場所を変えて複数持って栽培しています。平地、斜面、日当たりのいいところ、水捌けのいいところ、風通しのいいところ、などなど、それぞれの圃場がキャラクターを持っています。うちも中野市内約10箇所の圃場をアクティブにしてブドウ栽培しています。
会話の中でも、今年はここのブドウはいいのなったなぁ、とか、ここのブドウは今年はダメだ、という会話をしていて、どうもそれは毎年再現性があるわけではないらしい。つまり、一箇所に大きな圃場を持ってるとその年ごとに収量やや品質が乱高下するということです。ただでさえ不安定な農業という仕事、ちょっとでも安定的に営農するために農地分散を取り入れてきたのだと思います。

株式投資で言うと、投資先の国の分散に似ていると思いました。先進国株にも投資しつつ、新興国株にも分散させとくってのと似ています。世界各地って感じとのスケールは違いますが、中野市の農家は中野市各地で広く営農しています。

栽培する品種を分散

ブドウ農家といっても栽培する品種は一つではありません。うちの農場では、シャインマスカット、巨峰、ピオーネ、ナガノパープルを主に栽培しています。周りの先輩達はもっと色々な品種を栽培しています。
今はありがたいことにシャインマスカットが人気でその比率が多いですが、歴史のある巨峰も作る理由は、まさに株式の分散投資と似ています。自分では、セクター分散と似てるなぁって思ってます。IT、金融、ヘルスケア、一般消費財、等々、色々な分野の株式をポートフォリオに組み入れてリスク分散するものですね。
今調子のいいシャインマスカットは絶好調のIT株、歴史があって一定のニーズのある巨峰は一般消費財、と言うイメージを持ってます。シャインが急に値崩れする可能性も十分あるわけで、それに備えて巨峰も混ぜて栽培して致命傷にならないように備えます。
加えて、品種分散は病害蔓延耐性 (この品種は今年は病害にやられたけどこの品種は無事だった) や 作業時期分散 (一気にツブ抜きフィーバーきたら作業従事者が倒れちゃう、を防ぐ) の利点もあります。よくできてますね。あとシンプルに、色々な品種を育てた方が飽きなくて楽しいですよ。
*もっと先を見て、今のうちに新しい品種の苗も育てていかなきゃいけないわけですが、そこはまだ自分は勉強中で分からないので父親に任せています。

今年の巨峰も調子良さそうです。今は緑ですが2ヶ月後には漆黒が美しい粒になります。

分散のデメリット

もちろん分散しすぎもよくありません。デメリットがあることをわかった上で分散営農してます。
一つ目のデメリットは機会損失。米国株が絶好調なら他の国に投資してたら足を引っ張られてリターンが最大化しなじゃん、人気あるシャインマスカットだけ作ってればイイじゃん、と言うものです。もちろんその通りです。ですが、長期保有投資も数十年先の資産形成目的、ブドウ栽培も何十年も継続して続けるものです。長い目で見て生き残るのが目的ですので少しの機会損失はいたしかたなし!

二つ目のデメリットは、手入れに時間がかかることです。アセットの場合は、不動産が代表例でたくさん保有するとそのメンテナンスで時間がかかります。農家で言うと一箇所の大きい圃場で単一品種を栽培すれば、農機具もダイナミックに使えますし、移動の手間も省かれます。これもその通りです。ただ色々な景色のもとで色々なブドウを育てることもまた楽しいので、ヨシとしましょう。

分散しても全てをかっさらう自然災害

どんなに工夫してリスク分散しても、全てをかっさってしまうような事態も発生します。
株式市場でしたら、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックといった大暴落です。農家で言うと、台風や極端な小雨といった自然災害です。こればっかりはout of control です。防ぎようがありません。10年に一回くらい来るものだと思って生活してゆけば気が楽です。くらってしまったものはしょうがないとして、コツコツ復旧してゆくしかありません。これに対しては、生活防衛資金をキャッシュで持っておいて対処です。
大丈夫、歴史が証明しているように、各種株価暴落は時間をかけて値段戻ります。人間の経済活動は偉大です。暴落が来てもやめないことが一番大事で、コツコツ淡々と積み立て続ければOKと思ってます。
*もう一つ農家にとってのアクシデントとして、農業従事者病気や怪我があります。これも破壊力抜群です。これに対しては、日々の健康管理と民間保険でカバーですね。

袋掛け前のシャインマスカット。迫力のある大房大粒のシャインになってくれそうです。

工夫の積み重ねの上に成り立つ長く続けられるブドウ栽培

今の日本で、”農家”っていう職業がしっかりと残っているのは、こういったリスク分散などなど、色々な工夫の積み重ねのおかげなんだと、就農して見て改めて感じます。自分の場合は、先人たちが築き上げた土台の上で営農できてる状況で、かなりハードル下がってる状態で始めています。ですが、この地で果樹栽培を始めた頃のなんて、きっと想像を絶する苦労とトライアンドエラーの繰り返しだったのだろうと思います。本当に頭が下がります。

そんな先人たちや先輩農家さんたちに感謝しながら、明日もツブ抜きの続きを頑張ろうと思います。

それでは!

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