ブドウが発芽を迎え、病害虫防除のために、農薬に触れる機会が多くなってきました。農薬と聞くとなんだか怖いイメージがありますが、むやみに怖がる心配はないものであると思っています。
実際、散布のために毎年農薬を扱って(浴びて)きた祖父は96歳まで生きましたし、70を過ぎた父親も健康に暮らしています。正しく怖がって付き合えば、それほど怖いものではありません。
参考文献:図解でよくわかる 農業のきほん
農薬の毒性区分とその役割
農業生態系において、病害虫の防除に農薬は必要といえる。一方で、農薬には負の印象も強く、その懸念がつきることはない。では、実態はどうなのだろう?
農薬は毒性の程度により「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」および「普通物」がある。「毒物」や「劇物」と表示する理由は、保管・管理を徹底させるためである。「毒物及び劇物取締法」(主務官庁:厚生労働省)では、毒物、劇物の盗難や紛失を防ぐため、製造者、JAを含む販売者、使用者(農家)へ、鍵のかかる場所に保管することを義務づけている。
また、劇物指定の農薬を扱う販売店では、取扱いの資格をもった責任者をおかなければならず、購入者も「毒劇物譲受書」に署名捺印する手続きが必要になる。
なお、毒物、劇物の指定は「毒物及び劇物取締法」に基づくもので、登録農薬全体の約15%がこれに指定されている(うち毒物は1%未満)。言い換えれば、登録農薬の約85%は両召に該当しない、より安全な「普通物」が占めている。
「毒物」日即物」の判断基準「LD50」
「医薬用外毒」や「医薬用劇物」に指定する際の判断基準は、「急性毒性(LD50)」が用いられる。これは、ラットなどの供試動物が24時間以内に半数致死したときの薬物量を、その動物の体重1kg当たりの薬物量(mg)で表したも。
この判断基準を成人で換算すると、「毒物」は仮に誤飲した場合の致死量が2g以下、「劇物」は同じく誤飲した場合の致死量が2〜20g程度になる。なお、毒物や劇物に指定されている農薬は「農薬取締法」によって使用基準が厳しく規制されており、この基準(容器に記載)に沿って利用すれば、使用者にも安全で作物への残留もなく、消費者に安心な作物を提供できるとされている。
より効果的な防除をするために
いまの農薬は、前述のように毒性区分や使用基準がしっかり規制されており、むやみに怖がる心配はない。
しかし、化学農薬だけに頼らない病害虫防除が今後の農業にとって重要かつ大きな課題であることは間違いない。ただ、だからといって、やみくもに農薬の使用をひかえたところで、課題解決の糸口にはならないのも事実である。農薬だけに依存しないための努力や工夫をすると同時に、農薬について正しい知識を身につけ、上手に農薬と付き合っていくことが、病害虫と背中合わせの農業には大切である。