私の嫌いなもの、台風、長雨、黒とう病。どうやら今年も黒とう病との戦いが続きそうです。
ブドウ農家と黒とう病の戦い Fight against Plant Disease
病斑発見
朝の農薬散布をおこなっていると、何やら葉っぱに穴が。よく見ると黒いボツボツの中心に穴が。これが何なのか、知っています。去年も苦しめられた黒とう病です。
発見したのは、昨年多発したのと同じ圃場。一度発生すると数年続くと聞いてはいましたが、その通りのようです。そう簡単には撲滅できないだろうなとは思っていましたが、黒とう病を重点警戒して殺菌剤の散布を、こまめに、たっぷりとおこなってきただけに、ショックがありました。
しかし、出てしまったものは仕方ない。地道に戦ってゆくしかありません。
見つけたら排除、をコツコツと
殺菌剤散布は継続的に行いますが、これでは撲滅は期待できません。農薬に使用している殺菌剤は、名前こそ殺菌剤ですが、菌を殺す効果はなく、胞子の発芽を阻止する効果しかありません。殺菌剤というより予防剤といった方が正しい。
農薬散布と並行して、耕種的防除を行います。やることは単純で、巡回して病斑を見つけたら切除して園外に持ち出す。これをコツコツ続けるのです。農薬で大量繁殖を防ぎつつ、病原の絶対数を減らして被害を最小限に抑えるのが目的です。
探していると黒とう病の病斑とよく似ているものもあります。カスミカメムシの吸汁跡(これは感染性がないので良しとする)や、針金で擦れた跡が特に紛らわしいです。しっかり観察して、真のターゲットを見つけます。
完全勝利を目指すのではなく、優勢を目指す
考え方として大切なのは、撲滅を目指すのではなく、被害を最小限に抑える、と考えることです。相手は目に見えない菌で、風で、雨で縦横無尽に広がってゆきます。加えて、クリーンルームで栽培しているのではなく、自然の中で自然の力を借りて栽培しているもの。黒とう病に完全勝利はあり得ない、というかそう考えないとやってゆけないです。
勿体無いと思っても病斑が出た新梢は落とす、ブドウをならしても何割かはやられて出荷にならない、ということを前提に栽培を続けて正気を保つしかありません。ただできることはやってその割合をできる限り下げて商品につなげる。加えて病気の大量発生は周りの園地にも迷惑をかけることになるので何としても避けなければなりません。
これから梅雨になり、病原菌も活発になります。できることをコツコツと、地道な戦いは続きます。
農薬だけに頼らない病害虫の防除法 Pest control that do not rely solely on pesticides