冬のブドウの樹体内で起きていることをもう少し詳しく見てゆきます。
糖と窒素の次は、無機成分と栄養成分。
参考文献:最新農業技術果樹 vol.8
休眠中のブドウの体内で起きていること2 What is happening in the dormant grape part2.
無機養分の変化
リンやカリウム、カルシウム、マグネシウムの含量は冬季中はあまり変化を示しません。ただし、リンは、11月から12月にかけてと、4月上旬の発芽直前に、細根中にかなり活発に吸収されます。また、2、3月には細根中の含量が低下し、太根や母枝中で急増することから、冬季中もリンはブドウ樹体内を移動していると思われます。発芽期からは根中のリン含量は急減し、生長を始めた芽(新梢)へ多量に移行します。
樹液中の栄養成分
発芽期に近づくにつれ、樹体内では樹液が流動し、生長を始めようとする芽に大量の養分を供給します。その主な成分は糖や糖アルコール、アミノ酸などの窒素化合物、無機物及びホルモン物質などです。
樹液の流動は、加温開始時期によって変化があります。12月加温ではフラクトースやグルコース、及びイノシトール(糖アルコールの一種)が少なく、合計すると2月加温や無加温樹の約半分しか含まれていません。それだけ発芽しようよしている芽が受け取る養分が少ないと言えます。
窒素分については、12月加温では2月加温や無加温に比べてアミノ酸やタンパク質の形態の窒素が少なく、無機態窒素(アンモニアや硝酸)が多く含まれています。このことから見ても、早期加温では休眠期中の栄養代謝がほとんどできないままに発芽期を迎えていることがわかります。
ブドウの樹の周年サイクルには、休眠が必須なので、加温栽培の場合でもしっかりと寒さを経験させてから加温することが大切ということがわかります。