参考文献：果樹園芸学の基礎／伴野潔／山田寿／平智
適正土壌水分と灌水
果樹の成長に適する土壌水分は，樹種や品種によるちがいもあるが，一般にpF2.0 (9.8 kPa) -pF 3.0 (98 kPa)とされている。樹と果実の正常な成長には，生育ステージごとに適正な土壌水分を維持する必要がある。
極端な少雨などで土壌の乾燥がすすみ，pF値が3.0以下になるときには灌水が必要になる。果樹園への灌水方法には，加圧ポンプを使ったスプリンクラーによる散水(sprinkler irrigation)や，比較的低い水圧で使える，小さな孔のあいたノズルや小型スプレーによる点滴瀧水(drip irrigation) などがある。
灌水量の判断はなかなかむずかしいが、一般の果樹園では，1回の灌水量は30~40 mm程度が適当であると言われている。ただし、一回の灌水に全量を灌水すると，土壌を一気に圃場容水量にもどしてしまうので，とくに果実の成熟期には1回の瀧水量は少なめにして，複数回に分けて行なうほうがよい。
排水対策
果樹園の土壌が過湿になりやすいときは，排水対策が必要になる。排水方法には，明きょ排水(open ditch drainage)と暗きょ排水(under drainage)がある。前者は，果樹園の地表面に溝を掘って，雨水を園外に排除するものである。後者は，果樹園に地表面からlm程度の深さの溝を掘り，排水管を設置してせん定枝などの粗大有機物や砂利などを入れ，埋めもどしてつくる。雨水は排水管を通して園外に排除される。
地下水位が極端に高い果樹園や，水田転換園のような不透水層がある樹園地では，客土(soil dressing)や盛り土(mounding)が有効である。
積極的な灌水制限
多くの果樹では，果実の発育後期から成熟期にかけて，土壌が適度に乾燥しているほうが果肉の可溶性固形物含量（糖濃度）が高くなり，果実品質が向上する。そのため，樹に悪影響のない範囲で，品質濯水制限を積極的に行なうことがある。
また，梅雨期などに集中的な降雨があると，モモなどでは果実の品質が低下する。この対策に地表面をプラスチックフィルムでマルチし，雨水を排除することが行なわれている。
